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気になるバイオニュース、ちょっとマニアックな鉄道模型、心に滲みる酒場、まだバックパッカーという言葉が輝いていた時代の旅の話を中心に、徒然なるままに…


by Katsu-Nakaji

多比良・東大教授が懲戒解雇に4

—調査委員会に問題はなかったのか(続々)—
しばらくこの項を休んでいる間に、大きな動きがありました。多比良教授が、地位保全、未払い給与の支給を求めて東大を提訴したのです。今年の早い段階で、中央労働基準監督署は既に東大の懲戒解雇は不当との決定を出しており、また「監督責任だけで解雇は不当に重すぎる」との陳述書も集まってきていることから、予断はできないものの、東大にとってはなかなか厳しい裁判になりそうです。

さて、東大の調査委員会についてですが、最大の問題は、「専門調査委員」にあります。今回設置された調査委員会は、「調査委員」と「専門調査委員」に分かれており、調査委員が主導的な立場をとり専門委員がアシストする形になっています。しかし、松本洋一郎委員長を筆頭に、計4人の調査委員は皆工学系のためRNAという生命科学の最先端分野では門外漢。つまり、その道の専門家である専門委員が実際の調査をリードし、彼らの意見が最終調査報告書にそのまま反映されたとみるのが妥当でしょう(同報告書の調査結果部分はこれでもかというくらい専門的で、専門委員の存在が際立っています)。

誰が専門委員なのか、東大は長らく公表しませんでしたが、最終報告書の一番最後でやっと明らかにしました。以下はそのリストです。

餐場弘二(名古屋大学大学院理学研究科生命理学専攻、教授)
上田卓也(東京大学新領域創成科学研究科メディカルゲノム専攻、教授)
塩見春彦(徳島大学ゲノム機能研究センター、教授)
中村義一(東京大学医科学研究所基礎医科学大部門、教授)

現在、餐場・塩見の両氏はRNA学会の評議委員、そして中村氏は会長です。また上田氏は同学会発起人の一人。まさに超重量級の布陣で、いくら「科学的検証に協力」するだけといっても、「素人」の調査委員が(いや、多くのRNA研究者も)これら専門委員の意見に異議を唱えることはまず無理でしょう。

「中立かつ公正な立場で調査の進展を見守りたい」—東大への調査依頼で同学会はこのようにも述べていますが、実際には「多比良教授の論文に捏造の疑義あり」としたRNA学会幹部が東大による公正であるはずの調査に深く関与していたわけで、「無罪判決」は望むべくもありませんでした。それにしても、何(十?)年かぶりに「マッチポンプ」という古い言葉を思い出しました。また、多比良教授側によると、専門委員との面会を求めても一切認められなかったということです。どういう理由かはわかりませんが、専門家による直接の事情聴取なしに真実を解明することはできません。調査委員会は最終報告書の最後で「研究者が自由に話し合い、議論できる風通しのよい研究環境を作る努力をし、再発を防ぐ必要がある」「徹底した調査を行い、納得のいく対策をとる」と述べています。同委員会自体が先ずこのことを肝に命ずる必要があるでしょう。

さらに同委員会は、当初RNA学会が指摘した疑義のある論文が12篇もあるのに、なぜ調査対象を4篇にしたのか、その理由を十分に説明していません。唯一「実験結果の再現性の検証が比較的容易と判断された」としているだけです。もしこの説明を額面通り受け取るなら、この4篇の再現性が証明できても、残りの論文に捏造の可能性は残るわけで、「検証が容易か否かで『東大の信頼性』を左右する問題解明のベースとなる事柄を決めていいのか?」ということになってしまいます。もともと多比良教授は、指摘された論文のうちには論文の形をなしていない口頭発表、既に取り下げ済みのもの、単なる実験手法の紹介が含まれており、調査対象となるのは5篇と反論していました。実際に調査委員会が再実験を要求した4篇は、取り下げられたもの以外これら5篇の中から選ばれています。つまり、同委員会は同教授の主張を認めたわけですが、論文選択過程をあいまいな説明でごまかしています。

調査委員会は、最終報告書を、「東京大学は、研究活動を自ら点検し、これを社会に開示するとともに、適切な第三者の評価を受け、説明責任を果たす」(下線筆者)などとする研究の理念に関する東大憲章を引用することで締めくくりました。「調査では本当に公平性が担保されたのか」、この点について委員会は説明責任をきちんと果たすべきと考えます。
Commented by 東京大学 分子細胞生物学研究所 at 2012-01-20 00:45 x
世界中の研究者が注目している
東京大学 分子細胞生物学研究所の論文不正・捏造・改ざん・コピペ疑惑問題
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by Katsu-Nakaji | 2007-03-15 17:46 | 東大論文捏造問題 | Comments(1)