気になるバイオニュース、ちょっとマニアックな鉄道模型、心に滲みる酒場、まだバックパッカーという言葉が輝いていた時代の旅の話を中心に、徒然なるままに…


by Katsu-Nakaji

カテゴリ:バイオニュース( 12 )

阪大教授の森下竜一氏が立ち上げた創薬ベンチャー・アンジェスMGが、国際初となる遺伝子治療薬「コラテジェン」の製造販売承認申請をこのほど行いました。

この薬は、動脈硬化などで血管が狭くなり血が流れにくくなる末梢性血管疾患(閉塞性動脈硬化症、バージャー病)や虚血性心疾患を治すもので、具体的には、肝細胞増殖因子(HGF)というものを作る遺伝子を、血が通わなくなっている部位に投与してHGF蛋白質をつくり、それにより血管を新しくつくってしまうのです。

昨年の第III相臨床試験の好結果が承認申請につながりました。

森下教授には今から5-6年前にインタビューしたことがあったのですが、その時に「2010年には実際に遺伝子治療薬が出てきますよ」と予想されてました。半信半疑だったのですが、どうやら現実になりそうです。

HGFは糖尿病による末梢血管・神経障害や移植しか治療方法のない劇症肝炎、さらには認知症にも有効だとの研究成果がでています。いったん虚血性心疾患薬として承認を受ければ、他の用途のついての承認は比較的短時間に行われることが期待されます。患者さんにとっては朗報でしょう。
[PR]
by Katsu-Nakaji | 2008-04-04 14:14 | バイオニュース | Comments(0)

脊髄損傷治療に朗報

久しぶりのバイオです。

バイオの世界は「iPS(人工多能性肝細胞)の登場で再生医療の実用化がぐっと近づいた」と沸いています。京大・再生医科学研究所の山中教授が先鞭をつけたiPS細胞は、ES細胞(胚性肝細胞)の作成と違い受精卵の胚を破壊することがなく、しかもES細胞と同等(一部にはそれ以上という見方も)の分化能力をもっており、患者自身の細胞からも作れることから、倫理上および免疫反応の問題も少ないを考えられるからです。

そんなわけで、国際的に実用化へ向けものすごい競争が起こっています。「日本発のバイオ技術を死守しろ」と、政府は約30億円の予算(2008年度)をiPS研究につけました。

しかし本当にヒトの病気治療に使えるかは未知数で、山中教授も「克服すべき課題は多い」としています。マスコミ(自分もその一部ですけど)を中心に期待だけが先行したフィーバーぶりともいえるかも…。個人的にはしばらく静観したいですね。


それよりも、イギリスからちょっと気になるニュースが入ってきました。ケンブリッジ大のチームが、脊髄損傷の治療につながる研究成果をあげたというのです。


背髄損傷は事故などで脊髄の神経が破壊され体の自由が利かなくなる疾患で、スーパーマン俳優の故クリストファー・リーヴ氏がかかっていたことで有名。これまで、壊れた神経を再生する決定的な方法は見つかってませんでした。理論的には脊髄内の神経を再生することは可能。でも、損傷した部分に形成される瘢痕組織というものが再生を邪魔しているらしいのです。


ケ大チームは、なんとこの組織の中の分子を食べてしまうバクテリア酵素を発見しました。この酵素―コンドロイチナーゼ―はその厄介者を食べて神経を再成長させるだけでなく、損傷を受けていない部分の神経を伸ばして損傷している部分をバイパスして神経をつなげる役割もするというのです。


勿論、脊髄損傷に関しては、その治療のため様々な研究が各国で進行中で、アメリカでは近々体内埋め込み式で電気的刺激により神経線維を成長させる装置が実用化されるとも聞きます。


iPS、iPSと騒いでいるうちに、日本は様々なバイオ分野でさらに遅れを取ってしまわないか心配です。
[PR]
by Katsu-Nakaji | 2008-02-21 17:43 | バイオニュース | Comments(0)
スイスの製薬会社ノバルティスが開発した、世界で初めてのアルツハイマー病用貼り薬「エクセロン・パッチ」が米国で承認されました。従来から販売されているカプセル剤をパッチ式にしたもので、軽度から中程度のアルツハイマー型認知症の治療が目的。

背中、胸、上腕部などに貼って使用しますが、ノバルティスでは、飲み薬とは違い24時間薬剤をなだらか、かつ持続的に体に供給することができるとしています。臨床試験では同薬の投与で記憶力や日常生活能力が明らかに改善しており、吐き気などの副作用もカプセル剤に比べ3分の1程度に抑えられたそうです。また、介護者が薬剤の使用状況をすぐ把握できるのもメリットとして挙げています。

エクセロン・パッチは米国では近々入手可能で、欧州では既に承認申請が出されています。日本では小野薬品と共同開発中で、現在は第三相の臨床試験段階にあり承認申請まであと一歩というところ。発売されれば多くの患者さん達に歓迎されることでしょう。

また同薬は、効率的な薬剤デリバリーシステムとしてのパッチの有用性を改めて示したものと言えるのではないでしょうか。
[PR]
by Katsu-Nakaji | 2007-07-12 18:30 | バイオニュース | Comments(1)
創薬ベンチャー、アンジェスMGはこのほどHGF遺伝子治療薬「AMG0001」の国内第III相臨床試験が成功裏に終わったと発表しました。AMG0001は強い血管新生作用を持つ肝細胞増殖因子(HGF)を造る遺伝子を局所に投与し、新しい血管を造り虚血状態の改善させようというものです。現在治療法がない、末梢性血管疾患や虚血性心疾患に対し効果があると期待されています。

国内第III相臨床試験は重症下肢虚血症患者に対し行われていたもので、同社では比較対照のためのプラセボ(偽薬)群による症状改善率が30.8%だったのに対して、AMG0001の改善率は70.4%なったとしています。副作用については数例認められたものの、治療薬との関連性が無いか低いと判断され安全性も確認できたことから、今後は承認申請に向けた準備を進める方針です。

もし製造承認が得られれば、同薬は日本で初めてのヒトに対する遺伝子治療薬となります。近年、実際の製品が出ない中、創薬ベンチャーに対する投資家の反応は冷ややかなものになっていましたが、AMG0001によりバイオ投資が再び活気づく可能性があります。また、遺伝子治療薬開発の全体に弾みがつくことも十分に考えられ、今後の動向は要チェックでしょう。
[PR]
by Katsu-Nakaji | 2007-06-29 14:30 | バイオニュース | Comments(0)
理科化学研究所はこのほど、信和化工株式会社と共同で、日本海沿岸で大量発生し大きな漁業被害をもたらしている「エチゼンクラゲ」に糖タンパクの一種である「ムチン」が多く含まれていることを発見しました。

ムチンは胃液などの主成分で、その抗菌作用や保湿効果の高さから医薬品や健康維持製品、化粧品の原料として注目されています。また、胃ガンの原因となるピロリ菌の活動を抑える役割があることもわかってきました。

これまで工業利用されてきたムチンはガストリックムチンという家畜からつくられていたものに限られていましたが、理研では、エチゼンクラゲから発見されたムチンが低コストで大量生産が可能な上、化学構造を若干変化させることで高度な医薬品として発展する可能性があるとしています。

毎年数万トンもの規模で発生するエチゼンクラゲ。漁業のみならず工場や原発の取水口をつまらせるなど、工業へも被害も心配されています。今回の発見は関係者にとっては大きな朗報でしょう。

ただ、工業化ということになれば安定的に原料であるエチゼンクラゲを確保する必要があります。「突然いなくなった」ではすみません。そうした事態を回避するためにも、「そもそも、なぜエチゼンクラゲが大量発生するようになったのか?」その原因をきちっと解明することが大切でしょう。また、そのことによって海洋環境の変化についても理解を深めることができ、地球環境対策への応用も期待できます。
[PR]
by Katsu-Nakaji | 2007-06-19 14:29 | バイオニュース | Comments(0)
理化学研究所の研究チームがこのほど、ヒトES細胞(胚性幹細胞)の大量培養を可能にする技術を開発したと発表しました。

ES細胞は身体のほとんどあらゆる組織に分化することができるため、傷ついた神経や機能を失った臓器の再生治療の切り札と考えらています。ただ、倫理的は問題を抜きにしても(これ自体大きな問題ですが)、さまざまな問題が横たわっており、実際の医療への応用への道のりは遠いのが現状です。その問題の一つが、ヒトES細胞の大量培養は難しいということでした。大量の細胞が手に入らなければ、必要な組織や臓器はつくれません。

大量培養ができなかったのは、ネズミのES細胞などとは違い、ヒトES細胞が培養課程ですぐに死んでしまうためです。これを細胞死といいますが、その細胞死のため、従来の培養方法では99%の細胞が培養2日以内にだめになってしまいます。

理研は、細胞死を引き起こすROCKという物質(酵素)を見つけ、この働きを封じるY-27632という別の物質を培養液に加えたところ、従来の方法に比べ培養効率が約30倍に増加したと報告しました。おかげで、これまでは一ヶ月で100倍程度にしか細胞を増やせなかったのですが、新方式なら理論上1万倍に増やせるというのです。加えて、培養したES細胞が脳の神経を作るもとになる細胞に分化することにも成功したとしています。

これらのこと自体は、ES細胞研究にとって非常な朗報ですが、あくまで研究段階の話です。ES細胞は、基本的に無限に増殖するという点でガン細胞と同じ。それを体内でガン化させずに、どのように望むような組織に分化させるか、免疫反応をどう抑えるか(他人の細胞を体に入れると、それを外敵と認識して免疫システムが攻撃を始めるのです)等々、解決すべき問題は山ほどあります。そうした技術的な問題が解決されて医薬品が開発されても、厚生労働省が認可するまで何年かかるやら。あと、20-30年もすれば実用化が始まっているかもしれませんし、そうではないかも知れません。

たいていマスコミは、バイオで新しい発見があると決まって「~病の治療法開発につながる可能性がある」などと報じますが、可能性があるだけです。それを聞いた患者やその家族は本当に直ってしまうと勘違いするかも知れません。勿論、希望を持つことはそれだけで病気を治す力になるのですが、研究者や報道機関はやはり、本当に実用に近いものかそうでないものなのか、また問題は何なのか、きちんと伝える責任があります(自戒を込めて、そう思います)。そうすることが一日も早い医療への応用を可能にして患者を救うことにつながるからです。

ヒトES細胞大量培養成功を一部のメディアは大々的に取り上げました。しかし、それは難病を患っている人の期待を無用に膨らませるだけです。むしろこれを機会に、ES細胞の研究は必要なのか、もし必要ならいかにそれを迅速に進展させることができるのか、真剣に論じるべきです。
[PR]
by Katsu-Nakaji | 2007-05-29 20:04 | バイオニュース | Comments(0)
アメリカの代表的な自動車レース、「インディアナポリス500マイル」決勝が5月27日、インディアナポリス・モータースピードウエーで開かれました。最終戦の優勝を飾ったのは、女優アシュリー・ジャドの夫でスコットランド出身のダリオ・フランキッティ。優勝は彼にとって初めてで、スコットランド人としてはインディ史上2人め。

これだけでは全然バイオではないのですが、今年のインディカー・シリーズの注目点は「100%バイオエタノール燃料の使用」が義務付けられたこと。バイオエタノールはトウモロコシなどの植物から作られるアルコール。光合成の段階で大気中の二酸化炭素をたっぷり吸収した植物からできた燃料なので、燃焼時に二酸化炭素を排出してもトータルで+ーゼロと、地球温暖化物質としてカウントされません。つまり「F1よりもスリリング」とも形容され、ひたすらアクセルを踏み続け周回コースを限界のスピードで駆け抜けなければならない、何とも豪快なこのレースが、「世界で一番地球に優しい自動車レース」に変貌してしまったのです。

インディではすでに、同じアルコールのメタノール(これは天然ガスなどの化石燃料からできるので温暖化物質とみなされる)使用が1969年から義務付けられていたので、ホンダなどの参加自動車メーカーは、昨年実施の10%エタノール混合の移行期を経ての100%ルール適用に、比較的スムースに対応できたのでしょう。

ただ、いくら環境に優しいと言っても自動車レースなんですから、これまでより遅くなったり、つまらなくなってしまっては意味がありません。しかし、平均時速は230マイル(約360キロ)に達しており、興奮度も100%です。技術革新への、たゆまない努力のたまものと言えます。

環境保護というと、どこかに「我慢」の2文字が見え隠れするもの。しかしこの“グリーン・インディ500”は「エコをするにも楽しみを犠牲にすることなんかないんだぜ」と、まさにアメリカ的なメッセ—ジを発信しているようです。
[PR]
by Katsu-Nakaji | 2007-05-28 22:38 | バイオニュース | Comments(0)
久々のバイオ関連です。

先月、北海道岩見沢市にある、ネイチャーテクノロジー株式会社を訪問しました。天然ハーブから香りの成分を抽出し、それをパッチ(一般的にはサロンパスのようにペタッと貼るやつです)にして、皮膚から有効成分を吸収させる「アロマシューティカル」(健康香料)の研究、製品開発をしている会社です。会社の詳細は同社のHP(http://www.nature-technology.com/)を見ていただくことにして、一番驚かされたのが、同社の特別顧問である刈田毅氏が全くの独学でDGDS(ドラッグ・ガス・デリバリー・システム)という同社のコアテクノロジーを開発したという点です。同氏は、テルペノイドと呼ばれる植物由来芳香成分に着目。以来その研究に人生を捧げた結果、皮膚に直接貼らずに薬効成分を持つテルペン系化合物を安全に体内に運び込むパッチの開発に成功したのです。上着などの服の裏側に張るだけで効きくことから、肌がかぶれやすい人も安心して使えるほか、例えば人前やオフィスでも簡単に張替えができます。

これからの医療には欠かせない、必要な薬物を必要な量だけ必要な場所に運ぶドラッグ・デリバリー・システム(DDS)の開発で、世界中の大学や研究所が激しい競争を繰り広げています。様々な方式がありますが、パッチへの注目度も高く、糖尿病治療用のインスリンパッチが普及するのも遠い先の話ではなさそう。そんな中、ネイチャーテクノロジー社の最先端パッチ技術とハーブ、アロマを融合させ新たな医薬を創造する試みは、漢方やアユルヴェーダで古来から使用されている薬草等も視野に入れることで、大きな成果をあげる可能性があると言えそうです。血流を増加させる成分との組み合わせで、上着を羽織るだけの心臓発作予防、帽子をかぶるだけの脱毛予防・発毛促進なども実現するかもしれません。

そういった大きな広がりをもった技術にも独学で辿り着けることを、刈田氏は証明して見せました。「大学や研究所にいなくとも探究心と信念があれば技術は創れる」--目からウロコの岩見沢行でした。
[PR]
by Katsu-Nakaji | 2007-05-02 18:56 | バイオニュース | Comments(1)
アメリカの下院が11日に胚性幹細胞(ES細胞)を研究を連邦政府が支援する法案を、賛成253、反対174で可決しました。超保守のブッシュ大統領が拒否権を発動するのは確実で、今回の採決が即、「ES細胞研究解禁」(あくまで連邦レベルで)とはいきませんが、それを指示する共和党議員も多く、「次期大統領は民主・共和いずれであれ、同研究にゴーサインを出す」(民主党議員)のは確実のようです。

大統領選は来年。いよいよアメリカもES細胞研究競争に本格参入するわけで、ES細胞株を樹立した京都大学以外の利用がとてつもなく難しくなってしまった日本は、さらに遅れをとることが確実な情勢になってきました。
[PR]
by Katsu-Nakaji | 2007-01-15 23:00 | バイオニュース | Comments(0)
日本経済新聞によると、東京大学の中村義一教授(現日本RNA学会会長)、名古屋大学の錫村明夫教授、㈱リボミック、㈱セルシグナルズが、現在では根治不能な多発性硬化症(MS)の新しい治療候補物質を開発しました。人工RNA (リボ核酸)を利用した、治療のターゲットとなる物質に抗体より強力に結合する「RNAアプタマー」というもので、これまでのマウス実験では、それを静脈注射したマウスのMSの発症が遅くなったり、症状が軽くなったといいます。

RNAといえばDNAの陰に隠れ、一般にはほとんど知られていない物質と言うことができるでしょう。しかしここ数年研究が進み、これまで考えられていたような単なるDNAに書かれた遺伝子情報の伝達役だけでなく、遺伝子の働きを実際にコントロールする機能があることもわかってきました。今、最もホットな研究分野の一つで(アメリカの40代のRNA研究者2人が今年のノーベル生理医学賞を受賞しました)、それを応用した薬品や病気の治療法を開発する競争も始まっています。

「RNAアプタマー」はこれから本格的な動物実験に入るそうで、ヒトに対する安全性や効果を確認する臨床試験の開始にはまだ時間がかかり、たとえ臨床試験で好結果が得られたとしても薬品として承認されるにはさらに数年を必要とします。開発に失敗する場合も十分考えられ、過度な期待を持ってはいけないでしょう。しかし、難病患者やその家族にとって、治る可能性があるとないとでは病気に立ち向かうパワーが天と地ほど違ってきます。開発が順調に進むことを願います。
[PR]
by Katsu-Nakaji | 2006-12-21 14:22 | バイオニュース | Comments(0)